生産性とは何を意味するのか?生産性向上のポイントや方法を解説

日本で生産性の向上にスポットライトが当てられているのは、少子高齢化や労働人口減少などの社会問題が背景にあります。しかしそれだけではなく、「世界的に見て日本の労働生産性が長年低い水準である」というのも大きな理由の1つです。

OECD(経済協力開発機構)が毎年調査している加盟国の生産性情報によると、日本は主要先進国の中で47年間、最も生産性が低い国だとされています。さらに、OECD加盟36ヵ国の中で見ても毎年20位前後で、世界と比べると日本の生産性は低いものと言えます。

参照:日本生産性本部『日本生産性本部、「労働生産性の国際比較 2018」を公表

近年、多くの企業は「世界から見て生産性が低い国」という事実を真摯に受け止め、aiやデジタル化といった手段を使って生産性向上へ取り組んでいます。ですが、取り組みが思うようにいかない、成果がなかなか上がらない、と悩んでいる企業や組織も少なくありません。

今回は、生産性向上を成功へと導くために、「そもそも生産性向上とは何なのか?」という原点から説明していきます。業務効率化との違いも併せてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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生産性向上とは何か?

会社が保有している資源(人/物/金)を最大限に有効活用して、最小限の投資で最大の効果を生み出すこと。これが生産性向上です。そもそも生産性は「アウトプット(成果物)÷インプット(投資)」で算出する指標のことです。この指標を上げることで生産性が向上した状態になります。

では、なぜ生産性を向上させる必要があるのでしょうか?

理由1.労働人口が減少しているが、業務量は変わらない

日本の総人口は依然として減少傾向にあり、今後さらに減少していくと予想されています。みずほ総合研究所の調査によれば、2016年の労働人口が6,648万人なのに対し、2065年の労働人口は4,000万人弱まで減少するとのことです。

参照:みずほ総合研究所『少子高齢化で労働力人口は4 割減

労働人口減少は徐々に加速していき、次第に企業の人材問題を圧迫していくことになります。しかし、業務量は一向に変わりません。従業員の負担ばかりが増してしまい、ビジネスの停滞を招きます。そうした事態を避けるためにも、今のうちに生産性向上に向けた取り組みを始め、従業員1人1人の生産性を高め、少ない資源でより多くの成果が得られるようにしなければいけません。

理由2.激化するグローバル競争に勝ち残っていくために

インターネットが発展したことで、国境を越えるための労力は要りません。それにより、越境ECなどのビジネスが盛んになり、日本でも中国市場や欧米諸国をターゲットにしたECビジネスが拡大しています。

しかし、それと同時に多くのグローバル企業が日本市場をターゲットにして、様々な商品やサービスの提供を始めました。グローバル競争は日々激化しており、日本市場があっという間に席捲される可能性もあります。

そうした海外企業を含めた競合企業に勝つために日本企業の1社1社が生産性を向上し、グローバル環境で戦い抜くための施策が必要になります。

理由3.働き方改革など新しい変革に向けて

近年、日本では働き方改革に注目が集まり、多くの企業が生産性向上の必要性を感じています。2019年4月からは働き方改革関連法案が施行され、罰則付きの時間外労働の上限規制が施行されています。今後も働き方改革関連法案は拡大していくので、生産性向上の必要性は今後も増していくでしょう。

幸か不幸かコロナ をきっかけに在宅ワークも加速しています。

業務効率化との違い

生産性向上とよく混同されているのが、「業務効率化」です。生産性とは前述のとおり、投資した資源に対してどれくらいの成果を上げられたかを数値化したものです。そのため、少ない資源でより多くの成果物を生み出すのが、生産性が高い状態になります。

それに対し、業務効率化というのは業務プロセスが持つ「ムリ/ムダ/ムラ」を無くすことにより、1つの成果物を完成させるためにかかる時間や作業量を削減することを意味します。つまり、業務効率化とは生産性向上を目指す上で実施する取り組みや手段の1つと言えるでしょう。

生産性が落ちる理由

生産性を落とす要因と言われている中でも代表的なものを三つ紹介します。

 長時間の労働

かつて日本は、長時間労働とそれに伴う過労死の多さについて、 国連の社会規約委員会から指摘を受けたことがあります。それほどに、日本の長時間労働は大きな問題となっているのです。

長時間労働は生産性を著しく低下させます。

長時間労働を続けるとストレスや疲労が蓄積し、集中力や判断能力が低下します。従業員の作業の進みが遅くなるばかりか、ミスや事故につながることもあるでしょう。

さらに、従業員が遅くまで建物を使えば施設の光熱代もかさみます。また、時間外労働は割増賃金が発生します。

 複数のタスク

脳は構造上、二つ以上の物事を並列処理することが苦手だと言われています。一見すると同時処理しているように見えても、めまぐるしくスイッチを切り替えているだけなのです。負荷をかけ続ければいずれ限界が来ます。

別の案件の資料を見ながら、無関係な取引先と電話でやりとりをしたり、その裏で上司に返信するメールを作成していたり、従業員のマルチタスクが常態化していないでしょうか?

組織としては、このようなマルチタスクを可能な限り減らす仕組みが重要です。管理職やチームリーダーが、現在、部下が何をしているのかの作業を把握できるツールの導入や、連絡手段を統一するなど、マルチタスクにならない環境作りも重要です。

 個人とチーム生産性のアンバランス

チームで仕事を行う場合、メンバーの能力によって作業速度に差が出てくることはよくあります。生産性を低下させるよくあるミスとしては「作業の早い人に、遅い人ができない分の仕事をやらせて、終了時間を同じにすること」です。

チーム全体の作業スピードを高めるという点では効率的に見える手法です。しかし、「仕事ができない人の方が負担が少なく、できる人の負担が増える」という状態になってしまうのは、ただ生産量の帳尻を合わせているだけで、健全な状態とは言えません。

まして業務の負担に応じた給与ももらえず、役職も同じだと、仕事が早い人は会社に対する不満が募り、モチベーションが低下してしまいます。

チームの生産性をあげる理想の考え方は「作業速度の速い人に合わせること」です。平均にならすのではなく、ボトムアップの方向性で対策を考えましょう。

生産性はどうやって向上させるのか?

生産性向上に向けた施策はいくつもありますが、その中でも取り組みやすいものがいくつかあります。ここでは、生産性向上の施策をご紹介します。

業務の現状分析を実施しロードマップを描く

生産性向上へ取り組むためには、まず生産性を向上させるまでに必要なロードマップを描きます。やみくもに生産性向上へ取り組んでも、効率が落ち、成功する可能性も低くなります。

まずは最初に、日々の業務プロセスを洗い出してから現状分析を実施して、どこに「ムリ/ムダ/ムラ」があるかを考えてみます。たとえば、創業当初の伝統を守るためにムリな業務はないか?成果物に直結するような業務ではなく、周辺業務ばかりに時間をとられていないか?などを整理、把握します。

改めて整理してみると、生産性向上を阻んでいる原因が意外と多く見つかるはずです。その後、どう改善すれば生産性を向上できるかを考えます。さらに、何が目的で、なぜ生産性が必要なのか、それを考えロードマップに組み込みます。

情報の可視化を行う

会社の規模が大きくなるほど、社員1人1人が会社の実態を把握することが難しくなります。自社がどのような取り組みをしているのか、自分の今している仕事がどんな位置付けにあるかを知らないまま取り組んでいる社員がいるかもしれません。

そのような状況下では、積極性や学ぶ意欲の向上は見込めません。日々の作業に必要な情報だけでなく、会社が何を目指しているのか、そのために何をすべきかなどの情報共有を行うことが、結果としてモチベーションを高め、生産性の向上に繋がります。

ITツールを積極的に活用する

生産性を向上するにあたり、ITツールは有効な選択肢の1つです。ITツールにはコストが伴いますが、導入によりかなり高い生産性向上が受けられるのも確かです。

現在では生産性を向上するためのITツールが多数用意されています。先にご紹介したロードマップを作ったら、問題解決に有効なITツールを探してみましょう。たとえばファイルは業務には欠かせないものですが、もしファイルの共有に時間がかかったり、必要とするファイルが見つからない、時間が掛かるといった非効率性があるのであれば、クラウドストレージの導入やペーパレス化を検討してみましょう。他にも、

ウェブ会議

国内各地や海外を含めて、ビジネスマンの活動範囲が広範囲に及ぶ場合、全員が同じ時間に集まることは困難です。直接顔を合わせた会議を設けることができない場合は、ウェブ会議を導入してみてはいかがでしょうか。

GoogleハングアウトやSkypeなど、相手と違う場所にいながらミーティングを設けるためのツールは数多くあります。

中には、1万人以上が参加できる大規模会議向けのツールもありますので、積極的に活用してみることをおすすめします。

 モバイル端末導入やシステム化

ITツールはタスクの自動化や作業のサポートに役立てることができますが、モバイル化についても確認しておきたいところです。

クラウドサービスを導入して、会社のデータベースや掲示板などに、スマホなどのモバイル端末でアクセスできる環境を整える企業は近年かなり増えています。

外出先から資料の確認やデータ編集ができれば、移動中の無駄な時間を有効活用したり、取引先から別のデータ提示を求められた際、社に戻ったりメールで転送を頼んだりする必要がなくなり、効率化につながり、生産性もアップします。

モバイル端末の導入だけでも生産性が大きく向上する可能性があります。そのための環境や制度をある程度システム化することも行っておくべきでしょう。

適切な人材配置が鍵

得意分野やチームメンバーとの関係によって、同じ業務であってもパフォーマンスはまったく変わってくるでしょう。生産性向上のためには、それらを踏まえた上での適切な人材配置も必要です。

適切な人材配置には従業員一人一人の性質を把握することが重要です。アンケートや面談によって上司がヒアリングする機会を定期的に設けましょう。

一人一人の持つスキルや個性に注目して人材を活用することを『タレントマネジメント』といいます。適材適所のマネジメントに加え、目標設定やキャリアアップのサポートなども、生産性を上げるためには欠かせません。

国の生産性向上補助を利用する

生産性向上に向けた取り組みを支援する制度がいくつかあります。これを利用することが、施策を成功させるためのポイントになるかもしれません。

IT導入補助金

ソフトウェアやクラウドサービスなどのITツールを導入する企業を対象に、費用の一部を補助することで、最新のITやICT活用による生産性向上を支援する制度です。

両立支援助成金

人材評価や研修、短期間正社員制度などの雇用管理制度を改善することにより、男性の育児休暇取得や、子育て/介護との両立支援、退職者の再雇用支援などによって生産性向上を目指せます。

まとめ 

生産性を向上させるためには、生産性の意味と本質を理解し、企業の現状を踏まえた上での改革や施策を行うことが重要です。

過去の企業の実例などを参考に、行う施策が生産性に与える影響を予測した上で検討、実施していきましょう^^

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