グローバルな仕事に憧れて東アジアのビジネスを20年以上取り組んできました。中国語圏には「書き言葉」と「話し言葉」で様々な言語が存在します。書き言葉として中国語には簡体字と繁体字という2種類の文字が存在します。
話し言葉では、北京語、広東語、台湾語、上海語、四川語、など国土の広い中国語圏ならではの言葉があります。今回は「中国語の北京語と広東語の違いって、知ってる?」というテーマで、その違いについて解説したいと思います。
方言以上!?北京語と広東語は全く異なる言語
同じ中国でも地域によって話される言葉は異なります。例えば、アメリカ英語とイギリス英語の違いであったり、日本国内の関西弁、青森弁のような方言も存在します。広い中国に数種類の中国語が存在しても不思議ではありません。
しかし、実際に中国語に代表される北京語と広東語では、意思疎通が難しいくらいの違いがあります。北京語は中国の標準語として使用されている普通話(プートンファ)の基になっています。北京語は英語だと「Mandarin(マンダリン)」。一方で中国南部の広東省、政治問題に話題となっている香港、マカオ(澳門)を中心に話されているのが「広東語」です。こちらは英語の場合は「Cantonese(カントニーズ)」と表現されます。
北京語と比較するとマイナーな方言のような印象を受けますが、各国に存在するチャイナタウン、華僑・華人社会など、世界中に一億人以上の広東語話者がいるそうです。ジャッキーチェンさんが香港映画で使ったり、岡村隆史さんの主演映画で「無問題(モウマンタイ)」は有名ですね。
学習しやすいのは北京語
中国語は発音が難しくて、同じ「ma」の音でも、音の上げ下げで意味が違います。日本語でも「雨」と「飴」、「橋」と「箸」などをイントネーションの違いで区別しますね。北京語にはこの声調が4種類を四声(しせい)と呼び、「ma」でも、その音の変化で「お母さん」「麻(アサ)」「馬」「罵る」という、全く異なる意味になるんです。発声方法から意味まで4種類覚えなければならないなんて大変そうですが、なんと広東語にはこの声調が6-9種類も存在します。
北京語には「ピンイン(併音)」と呼ばれるアルファベットを使った発音表記体系が確立しています。日本語のローマ字表記の様なもので、ピンインを覚えれば中国語の発音ができるようになります。例えば、中国語の「日本」はピンインだと「rì běn」の表記になり、音声では「リーベン」と聞こえます。一方、広東語は、「ヤップン」となります。広東語はあくまでも話し言葉なので、発音されるのにそれにあたる文字がない、なんていうこともあるそうです。それでもどうしても書かなければならないときは、似た発音の漢字に口偏をつけて代用したりするようです。学習するならまずは北京語がおすすめです。
香港映画好きなら広東語
学習は難しそうな広東語ですが、調べていくと意外と身近な広東語の一面も見えてきました。まずは、香港映画。香港映画といったら、なんといってもジャッキー・チェンです。アクションに夢中で話されている言語など気にしたことはありませんでしたが、香港映画で話されているのは広東語なのです。日本語の「はい」は広東語の「係(ハイ)」が由来だという説もあります。語尾に「アー(啊)」をつけて「ハイアー」と言うと、より口語的になります。
広東語由来の日本語も多いようで「中国語を語源とする料理関連用語」から例を挙げると「ワンタン(雲呑)」「シュウマイ(燒賣)」「ライチ(茘枝)」などは、それぞれ広東語が語源だそうです。
また同じ広東語でも、広東省で話される広東語と香港マカオで話される広東語には、微妙なイントネーションの違いがローカルの方々にはわかるそうです。
「谢谢(シェシェ)」と「多謝(トージェ)」
「ちびまる子ちゃん」が香港で物議
2015年に公開された映画「ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年」は、翌年に中国や香港でも公開されました。作中では香港出身のキャラクターが自国の言葉を紹介する場面がありましたが、ここで使われていたのが中国の公用語である「北京語」で、香港の公用語「広東語」でなかったことから、当時の香港で物議を醸しました。
作中で紹介された「谢谢」(シェシェ)」は北京語で「ありがとう」という意味でしたが、香港の人が話す広東語では「多謝」(ドージェ)と言います。発音も表記もまったく異なるため。当時、インターネット上では「ちびまる子ちゃんは香港で愛されているのに悲しい」「香港から来た設定で北京語を話すキャラクターを作る意味がわからない」など、批判の声が相次いだ。
中国本土ならどこでも標準語とされる北京語が通じるし、誰もが北京語での学校教育を受けている前提なのだが、香港独自の文化(誤解を恐れずにいうとある種のプライド)がありそうではありません。ビジネスなどで中国と深くかかわるのであれば、北京語と広東語の違いを正しく理解する必要があると言えるでしょう。
首都・北京の言葉=標準語ではない!?
中国本土で標準語とされるものは「普通話(プートンファ)」、日本語では通称「北京語」とされているもののことで、中国のニュース番組で話されている中国語を指すと考えて間違いありません。日本でいうところの、東京の人が話す標準語にほぼ近いイメージです。
ただし、東京の人が話す言葉が完全な標準語かと言われれば、そうとは断定できないのと同じで、厳密には「普通話」と「北京語」も完全に一致するわけではない。北京にも独特の舌を巻く発音(語尾を「アール」化する)や、特有の語彙がある。ただし、ここでは便宜的に標準語を北京語としてと広東語の違いについて、見て行きましょう。
中国語は多種多彩でTPOに合わせて
北京語、広東語の比較表
使用人口 | 使用される主要都市 | 特徴 | |
北京語 | 13億人 | 中国、香港、台湾、シンガポールなどアジアの中国語圏 | 中国、香港、台湾のアナウンスやテレビニュースなどで使われている。日本など海外での中国語アナウンスとしても用いられる。 |
広東語 | 8000万人 | 香港、マカオ、広東省、東南アジアなど海外の華人社会の一部 | 香港でビジネスをする際は必須の言語。主に地元民同士の会話に使われる。 |
まずは中国の標準語・北京語について説明します。これは中国政府が制定した共通語で、地方によってバラバラな方言や言語で話されている言語を統一する目的で作られたものです。中国国内では、広東語や上海語、四川語、蘇州語などの方言を話す人でも、地元の方言と北京語の2種類を使い分けられます。地元での会話は方言、異なる出身地の人と会話をするときは北京語といった具合です。学校やオフィスなどでも北京語を話すことが推奨されていますが、その普及度は地方によって異なります。
大都市ほど独自の語学(広東語、上海語)が存在することが多く、地方出身者が上京する場合、通じないケースが多く、日本では想像できない経済格差が存在することも事実です。(親が地方出身者との結婚を反対し、同じ上海語圏を推奨するなど)
日本での中国語アナウンスは「北京語」
中国の標準語は、北方言語の語彙と北京官話の発音をベースにしてつくられています。北方言語の語彙とは中国北部で使われてきた語彙のことで、北京官話とは明清代の宮廷官僚が使っていた言葉です。
中国人は生まれ育った地域や住む地域によって、話し言葉に少なからずの地域性を持っているので、日常会話で完璧な標準語を話す人はかなり少数と言えるだろう。中国人にナレーションなどを依頼する際は、アナウンサーや中国語教育の関係者を採用するケースが多いようです。
日本の空港や小売店でよく聞かれるようになった中国語アナウンスは、基本的に北京語が使われています。また、香港の公共交通機関などでのアナウンスも広東語と北京語の2種類が流れるところが多く、北京語は中国語圏の人々へのアナウンスやガイドには欠かせないものとなっています。
広東語と北京語の違いは主に発音
主な北京語(普通話)と広東語の比較の例
北京語(普通話) | 広東語 | |
こんにちは | 你好 ニイハオ | 你好 ネイホウ |
さようなら | 再见 ツァイチェン | 再見 ゾイギン |
ありがとう | 谢谢 シェシェ | 多謝 ドージェ |
香港 | 香港 シァンガン | 香港 ヘォンゴン |
お茶を飲む | 喝茶 ホーチャー | 飲茶 ヤムチャ |
私は日本人です | 我是日本人ウォーシーリーべンレン | 我係日本人オーハイヤップンヤン |
広大な国土を持つ中国には無数の方言があります。各方言の違いは日本の方言のレベルをはるかに超えていて、耳で聞く分には外国語といって差し支えないほどの違いが出ることもあります。
広東語は中国に多数存在する方言のひとつにすぎないが、その使用地域は広東省のほぼ全域、香港・マカオ全域のほか、東南アジアや北米などの華人コミュニティの一部でも使われており、方言としては比較的メジャーな存在です。
北京語と広東語の違いについて、最も大きく異なるのは発音です。両者とも文字で表記すればそれほど大きな違いはないが、口語では全く違う言語のように聞こえます。日本の方言以上と言えるでしょう。
中国語に独特の声調(音の上がり下がり)についても、北京語は4種類、広東語は9種類(6種類という説も)です。また、広東語は口語として発達した方言であるため、文字で表記できない音もあります。このように、北京語と広東語は発音のほか、語彙、表現などさまざまな点で異なるが、あくまで話し言葉としての違いになります。
まとめ
同じ中国語でも、北京語と広東語では、アメリカ人とイギリス人が英語でコミュニケーションをとるようにはいかない、ということがわかりました。香港、上海は日本でも人気の旅行先です。
ぜひ機会があればまずは現地に行ってみて、その文化や言葉に触れてみるのがいいでしょう。きっと香港で谢谢をシエシエだけでなくドゥオシエやンゴーイ、と現地で使う話し言葉にするだけで、相手の印象も大きく異なります。
言葉だけでなく、郷にいれば郷に従うメリット活かして、相手に合わせてチョイスする楽しみ方も面白いかもしれませんね^^
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