新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京都の小池百合子知事が夏休み中の都外への帰省や旅行について自粛を求めるなど、今年のお盆の過ごし方は例年とは様変わりしそうです。
まだまだ収まりそうにない新型コロナウイルス。感染拡大防止の観点から、今年のお盆は帰省しない流れの中で、葬儀や仏事のオンライン化が急速に進行しているようです。
ライブ配信で葬儀や法要に“参加“することができ、お香典・お布施はクレジットカード決済といったサービスとなっており、築地本願寺もZoomでのオンライン法要サービスを発表しました。
僧侶がモニターの前で動画配信をしている様子が報じられると、ネット上では、その歴史的な装いと近代技術という“ギャップ”ある絵面が大きな話題になりました。かつては、物議を醸したこともある「仏事とネット」の関係。その変遷をたどりながら、今回は未来の法要についてご紹介します。
お経がオンライン!?
コロナ禍の今ではついにお葬式や法要までインターネットのサービスが登場しています。
そもそも、“厳粛な行事”という考え方が根強く、“形式”を大事にしてきた「葬」とネットのコラボレーションは、過去には軋轢(あつれき)を生んだこともあったようです。
しかしながら感染防止の観点からはむしろ時代に求められているサービスと言えるでしょう。
サービスの歴史とは?
はじめに法要業界のおけるオンライン化の歴史を見てみましょう。
イオンのお坊さんサービス
ネット上でのお坊さん紹介サービスというところでは、イオンが2010年5月に全国展開しました。しかし全日本仏教会(以下「全仏」)の指摘により、誤解を招く表現があったことから「寺院ご紹介」に切り替えたうえ、お布施として明記した全国統一価格の削除を余儀なくされたことがありました。(注:現在は価格表示)。
お布施はあくまでも“気持ち”であって、受け取る側が金額をバッチリ明記する“対価”ではないといった理由です。
Amazonのお坊さん便
しかし時代がすすむと、2015年にはAmazonに「お坊さん便」というサービスが出品されました。
お坊さん便は、定額料金で読経・法話を僧侶に依頼できるサービス。よりそう(旧社名は「みんれび」)が2015年12月、自社サイトに加えてAmazon.co.jpで提供を始め、「読経をしてもらいたいが、お寺との付き合いがない」「お布施をいくら包めばいいのか相場が分からず不安」という声に応えた商品として、ネット上で注目を集めました。
しかし、全日本仏教会が「僧侶の宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じる」などと問題視。同教会が16年3月、アマゾンジャパンに対して販売中止を求めるなど物議を醸しました。
よりそうは公式サイト上で「大手ECサイトへの掲載は、当時耳なじみのある方が少なかった民間の僧侶手配サービスの社会的認知を高め、菩提寺のない方へ広くアプローチする手段になった」と説明。
一方「仏事そのものが『出品』されたかのような誤解が生じたり、大手ECサイトに掲載できる情報量では供養の役割を十分伝えられなかった」とし、Amazon.co.jp上での取り扱い終了を決めたといいます。今後は自社サイトでサービスを継続されました。
また、顧客が利用後に支払う額を決められる「おきもち支払い」を導入することも発表。同社は「僧侶へのお礼、供養や信仰への思いを反映した金額を一定の幅で自ら選択できるようになる」「金額幅に裁量が生まれるため、一般的なお布施と同じく利用者のお気持ちを表現しやすくなる」と説明しています。 (2019年時点)
一方で、“お坊さんをモノとして扱う感じ”には不思議な感覚を抱く人もおり、また全仏が抗議するなど波紋を呼んだ結果、Amazonからは2019年10月24日に撤退となってしました。
最新のサービスとは?
Youtubeでお墓参り代行
このように、徐々にIT化の波が押し寄せていたお寺業界。2016年1月には、寺幸巡株式会社が、ネットで注文できるオーダーメイドの法事動画配信サービス「どこでもお墓参」(どこでもおぼーさん)を開始しました。翌2017年3月にはこれをリニューアルし、お坊さんがお墓参りを代行する様子をYouTubeにてライブ配信すると発表。
これには“それは意味があるのか?”という声があがる反面、 “行っとかなくちゃ、と気にしつつもなかなか行けない人にとっては、精神的に落ち着くのでは?”という見方もありました。
いずれにせよ、少子高齢化や人口の都市集中が進み、法事やお墓参りには、時間と手間、労力をかけることこそが気持ちの表明とは言い切れなくなっている時代を反映したサービスといえるでしょう。
新型のコロナウィルスによる帰省自粛
この流れの決め手となったのが、新型コロナウイルスによる外出自粛です。
毎日のように都道府県別感染者が発表される中、帰省自粛が話題になりました。
各社は続々とオンラインのサービスを開始しています。
株式会社メモリード
株式会社メモリードは、ライブ配信で葬儀参列ができる新サービスを開始。お香典はクレジットカード決済です。
YouTube LIVE で安心してスマ葬
アイフィットさいきグループが葬儀中継サービス「YouTube LIVE で安心してスマ葬」を発表。葬儀の後に会食する「精進落とし」も、オンラインで行われた。参列への体調不安だけでなく、参列したいのに出来ない親族や知人への配慮、また世間の風潮も全て解決出来ました。
つながる法要 以心伝心
既成教団の寺院住職たちが発起人となって設立した一般社団法人法要普及協会が、オンラインで法事を行うサービス「つながる法要 以心伝心」をスタート。支払いは利用後に金額を決める「お気持ち後払い」で、クレジットか郵便振込で支払います。
「つながる法要 以心伝心」でオンライン法事、法要普及協会が立ち上げ
寺院は、政府の休止要請施設から除外されたこともあり、週末ごとに日本中の寺院で法事が開かれている。一方で、法事の場で集団感染が起こり、法事に参列することの是非が問われているため、その対応が急務となっている。
新プランのつながる法要 以心伝心では、3台までタブレット端末を無料で提供することで、離れて暮らす親族や、僧侶と対話をしながらオンラインで法事を進めることができる。僧侶と参詣者の間を取りもつことで、故人と出会い直すという法要本来の意義を取り戻すプランとなっている。お布施は、法事後の後払い制となっており、利用者が金額を決めて気持ちを支払う。納得いかない場合は、お布施は無料となる。
一方的な配信ではなく、利用者と相互に対話をしながら実施するため、事前に30分、当日に60分の時間を設ける。また、よりよい法事とするために事前に故人のことを尋ね、僧侶と共有する。当日は、相互に対話をしながら実施するオーダーメイドの法事となっている。スマートフォンを持っていない高齢者や、機会が苦手な人でもボタン一つで利用できるよう設定した専用タブレット端末を3台まで無料で送付する。
未来のオンライン法要とは?
築地本願寺の「Zoom」を通した「オンライン法要」は、受け付け開始から1週間で「一周忌」や「三回忌」などの法要の予約が6件入ったと報じられています。仏事においても、時代はすっかりオンラインが加速しています。
今後は、「バーチャル背景にしてみたら頭部が一体化した」「参加者が次々に寝落ちして反応がなくなった」「回線が弱くて音声のみの配信。格好もラフでいいので好評だった」など、これまでにない新しい光景が繰り広げられるかもしれません。
コロナの影響でさまざまな行事が、一気に変化している2020年。新しい生活様式として、オンライン仏事がどこまで定着するのかは未知数ですが、お盆の様子がさま変わりするのは間違いなさそうです。コロナの影響で行動に制限が加わるなか、ネットではどういった話題が盛り上がるのでしょうか。
Youtubeが主流
横浜市戸塚区にある日蓮宗宗門史跡・名瀬妙法寺では、密を避けるため、毎年お盆に行われていた法要を動画投稿サイト「YouTube」でリモート配信されています。
徳治元年(1306年)開山で700年以上の歴史がある妙法寺は、少なくとも40年以上前から毎年8月16日にお盆法要を行っており、本堂がいっぱいになる800人以上が訪問となります。
しかし今年は感染予防で密を避けるため、初めて法要をリモート配信されます。16日午後2時から、公式チャンネルでライブ中継予定です。
現場のお声 久住謙昭住職
「何かの形でお経を届けたいと思った。お盆という日本の習慣を途絶えさせないためにも、オンラインという形でもしっかり続けるのが大事ではないか。お堂がいっぱいになれば3密になり、みんなでお経を読めば飛沫(ひまつ)も飛ぶ。集まるのが良くないことになってしまったのは悲しいし、つらい」と本音が漏れた。
まとめ
まだまだ収まりそうにない新型コロナウイルス。今回は感染拡大防止の観点から、今年のお盆は帰省しない流れの中で、葬儀や仏事のオンライン化をご紹介しました。
形は変わっても、供養の気持ちは変わらないこういったことが次のスタンダードになる可能性を感じます。「withコロナ」の様式について考えは様々でしょうが、現実的にできること、そして変化に順応していくことが私たちに求めれていくでしょう^^
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