【最新】大阪都構想「反対多数」で否決 大阪市は存続へ その理由とは?

大阪市を廃止して4つの特別区に再編するいわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が11月1日に行われ、反対が賛成を上回りました。大阪都構想住民投票は、またしても「反対多数」という結果となりました。これにより、いまの大阪市を廃止して4つの特別区へと再編する「大阪都構想」は否決され、大阪市の存続が決まりました。

吉村氏、「メリット説明し切れず」 住民投票結果に―大阪都構想:時事 ...

11月2日午前1時ごろに「大阪都構想」の住民投票の開票率が100%となり、賛成が67万5829票・反対が69万2996票となりました。 投票率は62.35%で、5年前の66.83%より4.48ポイント低くなりました。 「大阪都構想」を推進してきた大阪維新の会の松井一郎代表は、11月1日午後11時から行った記者会見で、「市民の民意だ。この民意をしっかり受け止める」と話しました。さらに、「市長の任期を全うしたうえで政界を引退する」と表明しました。

当初は公明党が「賛成」にまわるなど可決濃厚とまで目されていた今回の住民投票、なぜ反対派が勝利することができたのか不思議に思う人も多いかもしれません。今回は、改めて概要と「反対多数」となった理由に調べてみました。

「大阪都構想」とその背景は?

争点、議論かみ合わぬまま… 大阪都構想、きょう投開票 [大阪都構想 ...

大阪で検討されていた行政制度改革の構想のことです。11月1日の住民投票で反対となりましたが、もし賛成多数の場合は、大阪市を廃止し4つの特別区に分割。これにより大阪府との役割分担を明確にする狙いがありました。

大阪府は南北に細長く、また面積も全国46位という小さな都道府県であるが、その経済的及び地理的中心地には、強力な政令指定都市である大阪市が位置しています。大阪において、”経済的においしいところ”はほぼ大阪市に含まれているため、大阪市の権限と財力は非常に大きく都道府県である大阪府に匹敵するほどの力を保持しています。

したがって大阪府が大掛かりな都市計画事業を行う場合、大阪市域は欠かせないエリアであり、大阪市の意向を無視することは出来ず両者はしばしば意見が合わずに対立を繰り返してきました。そこで、提案されたのが大阪都構想です。

この案による行政システムは、大阪市の持つ広域的な事業の権限を府に移管してたうえで4つに分割し、それぞれを小さな自治体として東京都のような特別区を設置するものでした。したがって、特別区では区長は選挙で選ばれ、市議会に替わりそれぞれの区に区議会が設置されます。

ちなみに、”都構想”と名付けられてはいるが、これは東京都に模した行政システムなのでそう名付けられただけで、住民投票の結果、大阪市の廃止と特別区の設置が決まっても「大阪府」の名称が「大阪都」になることはありません。

賛成多数になっていたら?

今回の住民投票で賛成多数となっていた場合、以下2点が実現する見込みでした。

引用:MBS(毎日放送) 

現在の24区では実現できないのでしょうか?

・現在の大阪市24区は行政区で区長も市長に選任された一般公務員。
・特別区では区長や議員が選挙で選ばれ、基礎自治体としての権限をもつ

大阪市が特別区となり住民サービスをより丁寧に届けられるようにすることが、今回の再編における大きな狙いでした。これに伴い、これまで「府」と「市」で重複していた役割を、以下のように整理されていました。

引用:MBS(毎日放送) 

大阪市を4つの特別区に分割

大阪市が掲げる方針
「自治体の範囲を限定し、地域に応じて住民サービスを充実させること。各特別区長や議員を選出し、身近なことを身近で決められるようにする」

各特別区長が予算編成権をもっており、地域ニーズに応じた政策を提供。たとえば、これまで1か所だった教育委員会や保健所、パスポート交付なども対応施設を増加する見込みで、なお再編後も各区役所はこれまで通りサービスを提供が想定されていました。

大阪府に多くの機能を一元化、二重行政を解消

大阪市が掲げる方針
「大阪全体のさらなる成長や都市の発展などを知事のもとに一元化。インフラ整備や再開発などの都市経営、災害対策などを判断・実行しやすくする」

首長と議会が一つになるため意思決定がスピーディーとなる可能性があったわけです。 大阪全体を見た都市経営を可能にして、二重行政を解消したいとしていました。

そもそも「二重行政」ってなにが問題?

大阪府だけでなく、大阪市も都市開発や交通インフラ整備などを行っており、これでは財政負担も大きいため、役割分担をして、今回の再編で解消できないかが議論されていました。

〇大阪都構想のメリット
<都市計画・都市デザインの意思決定の一本化とスピードアップ>
これまで大阪市が持っていた大阪市内の都市計画・都市デザインの決定権限や大阪市の至宝である大阪メトロ(地下鉄)の管理権限も大阪府に移管するため、これまでのように都市計画事業において大阪府と大阪市の利害が衝突することは解消されます。それに関連して、大阪市が徴収していた固定資産税・都市計画税・法人市民税などの徴税権も府に移管されます。

したがって、大阪における都市計画・都市デザインの決定が一元化されスピードアップが図られることになっていたと思われます。変化の激しい現在において、このような意思決定の統一とスピードアップ化はメリットといえたでしょう。

<重複する事業の統廃合>
大阪市が強力な財力を持つがゆえに、これまでは大阪府と同じような事業を重複する形で行ってきたケースも少なくないが、それらに関する権限を大阪府に移管させれば、行政の無駄を解消し税金を有効に活用することが出来ます。いわゆるこれが賛成派が言う「二重行政の解消」というものでした。
しかしながら、この7年ほどの間に大阪府と大阪市の事業の統合はすでにかなり進んでいます。例えば、大阪市立大学と大阪府立大学の統合、大阪府市の保証協会の統合、地方衛生研究所の統合などです。あと残っている大きな事業といえば、府市の水道事業程度であろうと思われます。


〇大阪都構想のデメリット

<行政コストの上昇>
これまで大阪市ひとつの行政単位でおこなっていたものを4つの特別区に分割する訳であるから、当然の結果として行政コストが上昇することになります。大阪市が出してきた資料でも、分割コストが241億円であり、毎年ランニングコストの上昇が30億円ということになっています。

もし、都構想が実現されても税収が変わらないのなら、これらの費用は大阪市民及び大阪市内に所在地を置く法人が負担することになります(一部は大阪府の負担)。すなわち、新たな税金を創設して徴収するか、現在の行政サービスのレベルを低下させる必要がありました。

<4つの特別区の利害調整が必要になる>
都構想が実現されると、メリットで述べたように都市計画・都市デザインなど広域に関わる意思決定は大変スムーズになるのであるが、逆に特別区が行うもっと生活に密着した事業に関しては、特別区同士の利害が衝突し、事業の遂行に支障をきたす可能性があります。

なぜなら、特別区はすべての事業をそれぞれの特別区だけで行うのではなく、介護保険事業、スポーツ施設管理事業、財産管理などの事業は「一部事務組合」を作り、4つの特別区が共同で行うからです。
したがって激しい衝突でなかったとしても、別々の自治体となった4区はそれぞれの主張を展開することから、どのような形であれ特別区間の利害調整は必要になったでしょう。

反対多数の理由とは?

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現状維持層の支持

 今夏までは賛成派が反対派を大きく上回っていたとみられる中、10月に入ってから急速に反対派が増えている理由の一つには「現状維持層」が挙げられます。

昨日の投開票後の橋下徹氏のコメントにも「人間は将来の不安に対し、ものすごく神経質になるもの。(大阪都構想の)将来に不安があるぐらいなら現状の問題点を甘受しようということだろう」とのコメントを出しています。

今回の住民投票では、「大阪市が廃止」されるということで、特に高齢者層を中心に「大阪市」に対してノスタルジーを感じる人たちを狙って、「特別区に移行すれば後戻りができない」「130年の歴史ある大阪市が終わる」などといった反対派のアプローチはこの点を狙ったものともいえます。

実際に住所表記が変われば、表札を変えたり新しい住所をお知らせしたりなど時間的または費用的コストはある程度かかることは間違いありませんが、2025年という将来に発生する具体的なコストが見えず、どのように住民サービス・生活様式が変わるのかが手に取るようにわかるまでには至らなかった、というのも「反対」が多かった理由でしょう。

維新の会の層の薄さ

 昨日深夜に行われた「反対」派の記者会見では、松井一郎おおさか維新の会代表が任期満了での政界引退を表明したほか、吉村洋文おおさか維新の会代表代行も、「僕が都構想に挑戦することはない」と明言をしました。

 5年前の反対多数から、公明党の懐柔など様々な形で都構想を推進してきた維新の会でしたが、一方で政党としての拡大の限界を迎えつつあったのも事実です。おおさか維新の会を母体とする日本維新の会は、関西圏での存在感を増やしつつありましたが、一方で大阪府外での影響力はまだわずかなものです。東京進出など国政で力をつけるためのアプローチも行われてきましたが、長期政権となった安倍政権の下ではこの5年間で衆議院議員総選挙も1回しか行われず、国政レベルで都構想や道州制を焦点にすることはできませんでした。

 橋下氏が政界を引退した後、松井・吉村のツートップ体制が注目を集めましたが、それは一方でツートップ体制が公務に集中しなければならない(コロナ禍のような)状況下においてマスコットとなる人材がいないという、維新の人材不足問題も露呈したことになります。

コロナ禍では吉村知事の記者会見やリーダーシップが評価された一方で、これら維新による府政運営の賛否と都構想賛否が必ずしも一対一対応していなかったことは各種世論調査や情勢調査で明らかでした。特に無党派層では、府政運営には一定の評価をするものの、都構想についてはニュートラルな状態から判断をした人が多く、松井・吉村ツートップが司令塔となる中で草の根の活動を展開するための人員に不足があったことは否めません。

公明党と創価学会の溝

 恐らくもう一つの誤算があったとすれば、あの公明党が一枚岩になれなかったことです。常勝関西とも呼ばれる鉄の結束を誇るはずの公明党ですが、報道各社の出口調査では賛成と反対がほぼ拮抗もしくはやや反対が上回る結果となりました。

公明党本部は山口代表まで来阪させて賛成を推し進めましたが、コロナ禍ということで十分な地回りや集会が開かれなかったことが大きな理由とも言われています。選挙最終盤では、創価学会員を名乗る人が大阪駅前で演説をしていた公明党議員に涙ながらに詰め寄る動画などもネットではみられるなど、相当な軋轢があったことがわかります。

 そもそも、公明党以外の(前回2015年の住民投票時に存在しなかった政党を除いた)すべての政党は、前回とスタンスが一緒です。公明党だけが反対から賛成に転じたわけで、その方針転換をきちんと支援者に伝える責務がありました。党利党略の中で公明党は維新と手を結び賛成に転じたわけですが、個々の住民サービスに危惧する層や婦人部などの学会員などまでに都構想の支持を広げるためには、相応の対話努力が必要であったにも関わらず、コロナ禍という状況などもあり、浸透が不十分だったというところでしょう。

4分割によるデメリット

毎日新聞が「大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算」との報道を出したのは、26日正午でした。朝日新聞なども追いかけたこの記事は、結果的に大阪市が発表を撤回するまでの間相当な拡散をすることとなります。NHKが住民投票に関連してSNS上で流行ったキーワードを追いかけた分析では、後半戦に「コスト」という言葉が大幅に上昇したことからも明らかです。

 期日前投票は、一般的に期間後半ほど投票者数が伸びる傾向にあります。今回でいえば、13~25日までの13日間で約22万8千人に対し、26~31日の6日間で約19万人(いずれも不在者投票含む)と、この傾向は強く出ました。大阪市役所が発表に対して誤解があったなどとして実質撤回をしたものの後の祭りであり、後半戦の早いタイミングで出た報道が賛成派にとって最終的な打撃となったことは間違いないでしょう。

まとめ

一阪人2🌻大阪市存続なら¥0🍡大阪都構想💀正しく知ればNOになる ...

2度の都構想住民投票は、いずれも反対多数で否決という結果となりました。

 今後はどうなるのでしょうか。大阪都構想はおおさか維新の会、日本維新の会にとって一丁目一番地の政策でした。この政策が2度否決されたことで、党の方向性を一時的に失う可能性は高く、新たな党の方針を早期に打ち出さない限り、来たる衆院選にも影響を与えることは間違いないでしょう。

東京都知事選挙で維新が躍進とみる識者も多い中、維新はすでにピークに達したとの見方もあったことから、緩やかな下降トレンドになる可能性もあります。一方、コロナ禍は当分続く見通しの中、吉村知事のリーダーシップは健在でしょうから、この点人気が急激に低下するとは考えにくいです。

 公明党も今後が不安視されます。衆院選はあくまで党代表を国政に送り込む場であり投票の大きな目的が異なりますから、今回の住民投票における分裂という結果がすぐに府内4小選挙区に議員を有する衆院選に大きな影響を与えるとは考えていません。しかしながら、公明党と創価学会との間に溝が深まったことは事実であり、自民・公明・維新による連携三角形が崩れる可能性は大いにあります。安保法案時にも創価学会と公明党とは宗教方針と党是との差異で緊張した関係になったことや離反者が出たことも事実であり、早期に対話を実現しない限り、中長期的な瓦解を引き越す可能性もあります。

 一方、自民党大阪府連は今後は維新に近いとされている政権中枢との関係再構築が課題となります。また、統一地方選は2年半後とまだ先ですが、必ずしも2度の都構想否決が維新の凋落を決定づけるものとはいえず、また府政運営賛否と都構想賛否が一対一対応しないことの裏返しになりますが、必ずしも都構想反対=自民支持というわけでもないことから、再度、府議会や市議会などの地方議会でのプレゼンスを出すための努力が必要になります。

2025年大阪万博開催を控え、都構想や道州制の明らかなターニングポイントを迎えた今後の大阪にも注目ですね^^

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