中国ではモバイル決済が急速に普及してきています。これを支える二大プラットフォームが「Alipay (支付宝/アリペイ)」と、今回ご紹介する 「WeChatPay (微信支付/ウィーチャットペイ)です。「中国版LINE」と呼ばれる「WeChat(微信/ウィーチャット)」に組み込まれた決済サービスのため、SNSに紐づく個人間決済で、利便性が高いと評判です。
今回はWeChatPayの利用登録から使い方までを解説します。
WeChatとWeChatPayの定義
WeChatとは?
WeChatは月間アクティブユーザーが世界で11.51億人(2019年第3四半期)にも達する規模のSNSアプリです。中国の人口が約13億人で、その殆どが利用しています。そして中国だけでなく世界での普及率も徐々に伸ばしてきています。
WeChatは中国のIT業界を率いるテンセント(騰訊/Tencent)が開発したチャットアプリで、2011年の初代WeChat公開から現在に至るまで、大量のユーザーを獲得し、ほぼ全世界で利用でき、20もの言語に対応しています。
便利な機能とは?
機能はインスタントメッセージのやり取りはもちろん、モーメンツ(LINEのタイムラインに相当)、ニュースの閲覧やショッピング、そしてペイメントなど。日本のLINEアプリを更に発展させたサービスと理解していただければ良いでしょう。また、近年はアプリ内のミニプログラムによってあらゆるサービスがWeChatアプリ一つで利用可能になっています。すでに生活インフラに欠かせないツールとなっており、機能は月に2回ほど定期的に更新され、新機能の追加も頻繁に行われています。
また、WeChatが設ける公式アカウント(公衆号)は、顧客獲得の有効な広告ツールとなっています。規制のため2018年12月あたりから個人は2個だったものが1個まで、企業は5個だったものが2つにしか開設できなくなったので、ペースは緩やかになってきているようです。WeChatに限らず、利用にあたっては中国のインターネット環境が特殊であることを理解して、セキュリティや個人情報の管理に留意していきましょう。
WeChatPayとは?
WeChatPayとは、WeChat内のモバイル決済機能です。WeChatユーザーの過半数にあたる約8億人(2019年1月発表)がWeChatPayを利用しています。
こちらも日本のLINEペイや楽天ペイをイメージしていただけるとわかりやすいと思います。QRコード決済、オンライン決済など数々の支払い方式に対応しており、友人間の送金ももちろん可能です。お金のやり取りをしたい相手のWeChat IDさえ知っていればどこにいても送金できます。また、たとえWeChat上の友人ではなくてもQRコードでの送金が可能なので、送金機能を使う人が増えています。
日本人がWeChatPayを使うのに必要な条件は頻繁に変化しています。現在は中国の銀行口座を紐付けなければ利用できませんでしたが(2019年11月18日現在)、今後はクレジットカードを紐付けるだけで一部の機能を利用することが可能になると発表がありました。
WeChatPayの利用制限の経緯
WeChatPayがリリースされた当初は中国の銀行口座やパスポートとの紐付けが必須でした。ちなみに中国の銀行口座を開設するには基本的にはビザが必要なため、実質的には中国に住んでいる人しか利用できない状況でした。この基準は2018年から緩和され、一部の機能を覗いては海外のクレジットカードと紐付けるだけで利用可能となりました。この間に海外ユーザーの利用者は増加することになります。
しかし2019年の2月から規制され、中国に銀行口座を持っていないとお金の受け取りができないよう制限されました(支払いは可能)。仮想通貨の購入にWeChatPayを使うことで、マネーロンダリングやテロ資金への供与ができる危険性が政府に問題視されたからと言われています。しかし今後はまた新たな対応が予想されます。
WeChatPayの使い方とは?
WeChatのアカウント登録は、有効な電話番号さえあれば第1ステップは完了です。続いて、パスポートなどの身分証明書による本人確認と本人名義の電話番号、本人が開設した銀行口座が必要になります。
【ステップ1】中国の銀行口座を開設
各種サービスを利用するなら、登録後にさまざまな手続きを行なわなければなりません。そのひとつ目は銀行口座の登録です。
その前に、中国の銀行で口座を開設が必要です。口座開設には、以前はパスポートのみでOKでしたが、外国人はビザの取得が必要のようです。
【ステップ2】アプリのダウンロード~アカウント登録
アンドロイドならGooglePlay、iPhoneならAppStoreでWeChatアプリをダウンロードしましょう。次に、以下の手順でWeChatアカウントの作成です。
ダウンロード後、アプリを開くと表示される画面。
画面右下の「その他オプション」をタップして「登録」を選択。
ここで、電話番号を登録。「地域」を選んだら自分の電話番号を入力してください。
利用規約を読み、「同意」を選択。
次にセキュリティ確認を行ってください。
おなじみのパズルドラッグ認証。
SMS認証です。画面に表示されたパスワードを指定の送付先に送信する方式。
上記の流れで新しいアカウントが作成され、まずはチャットアプリとしてWeChatが使えるようになります。
【ステップ3】バンクカードを登録
次はステップ1で開設した銀行口座のバンクカードをWeChatPayと紐づけます。口座開設時に登録した身分証明書と電話番号が、これから登録するものと一致することが必須なので、要注意。WeChatPayには、国内のデビットカードとクレジットカードを関連付けることができます。
「本人」から「ウォレット」を選択。
キャッシュカードを手元に用意し、「カード」を選択。
口座番号を入力した後、銀行名を選択。
カード情報の詳細を入力しましょう。このフォームに入力する電話番号は、銀行口座に登録した電話番号や名義と一致している必要があリマス。
ここまで正常に完了すると、数字6ケタからなる支払いパスワード(暗証番号)を登録する画面です。任意のものを登録しよう。
【ステップ4】銀行口座からウォレットにチャージ
銀行が発行したデビットカードを登録すれば、引き出しも預け入れも自由になります。次はウォレットに電子マネーをチャージしましょう。
「ウォレット」を開き、真ん中の「残高」をクリック。
「料金補充」で、登録した銀行口座からチャージができます。逆に、チャージした電子マネーを銀行口座へ戻すことも可能です。その場合は金額に応じた手数料が差し引かれます。ここでステップ3の最後に登録した支払いパスワードが必要になる。
銀行口座以外からチャージは可能?
WeChatに紐づけできるのは銀行が発行したデビットカードとクレジットカードのみです。クレジットカードの場合も、デビットカードを登録するのと同じ手順でカード情報を登録しましょう。
WeChatPayの店頭決済
「残高」に金額が表示されたらチャージ完了。店舗やオンラインショッピングで実際にWeChatPayを使用できるようになります。実際に店頭で決済する方法は以下の2種類。
【パターン1】お店にQRコードをスキャンしてもらう場合
店頭にスキャナーが設置されており、スマホに表示した自身の支払いコードをかざしてスキャンしてもらいます。最短2秒で支払いは完了。コンビニや大きなスーパー、ファーストフード店などではこの方法が一般的です。
【パターン2】お店のQRコードをスキャンする場合
店頭に掲示されているお店のQRコードをスマホでスキャンする。支払金額を入力したら、TouchIDか支払いパスワードで決済を完了です。こちらのパターンは露天の屋台など小規模店で使う機会が多い。利用者側は少々手間ですね。
WeChatPayの便利な5つの機能とミニプログラムでの利用
WeChatPayは他にもさまざまな用途があります。すべてがスマホで完結するため、銀行に行く必要もなければ財布も必要なくなります。
【その1】電子マネーを銀行口座に入れる
現金が必要になった場合や銀行口座にお金を戻したい場合は「残高」から「引き出し」を選択し、金額を入力してください。。ただし、この時に少額の手数料が取られます。
【その2】友人間の送金
お金をやり取りしたい相手とのチャット画面を開いて「送金」をタップ。送金額を入力したら支払いパスワードを入力し、相手が承認するのを待ちましょう。
【その3】携帯料金のチャージ
中国の携帯料金は一般にプリペイド式です。残額が減るたびにチャージする必要があるが、これもWeChatPayだけで完結します。
「ウォレット」画面から「Mobile Top Up」をタップ。
電話番号を入力して支払金額を選び、支払いパスワードを使って決済完了となる。
【その4】自販機の決済
自動販売機もWeChatPayにも対応しているので、ぜひ利用してみましょう。決済方法は店頭で物を買う時と同じでQRコードを使えます。
【その5】友人間の割り勘
割り勘機能は、誰かが立て替えた支払い額を精算するのに便利です。
「ウォレット」画面の「マネー」をタップ。
画面下方の「割り勘」を選択。
金額とメンバーを入力。メンバーは「チャットを選択」から割り勘をする人が含まれるチャットに入って友だちリストを編集するか、「連絡先」からメンバーリストを作成しましょう。金額とメンバーを確定すると、1人当たりの支払額が自動計算され、メンバーに請求が行きます。
ミニプログラム
そして近年Wechatが力を入れて開発して普及させているアプリ内ミニプログラムでもWechatPayを使うことが可能です。それぞれのミニプログラムアプリでの決済方法選択時にWechatPayとの連携を選択すれば良いだけです。
Wechat Payの画面の下部に「Powered by third-party operator」のリストが表示されています。ここに表示されているアプリを選択するとWechatのアプリ内でミニプログラムとして立ち上がり利用することができます。
例えば、中国での移動に便利なタクシーアプリ「Didi」を利用することができます。「Ride Hailing」のアイコンをクリックするとミニプログラムとしてDidiアプリが起動(利用には別途Didiでの登録が必要です)
また、チャット画面を下にドラックするとミニプログラムの一覧を呼び出すことが可能
ここでは中国のシェアリング自転車サービスの「mobike」を立ち上げてみましょう。検索ボックスで「mobike」を検索すると「摩拜单车」アプリがリストのトップに表示されるので、それを選択してください。
別途mobikeアプリを立ち上げることなく、Wechat内ミニプログラムでmobikeアプリを利用することができます(利用には別途mobikeでの登録が必要)
WeChatPayのメリット
WeChatPayのメリットは、大きく3つあります。
あらゆるシーンで支払いができる
WeChatPayでの支払いは中国で広く普及しており、スマホ一台ですべて完結できます。
デパートやコンビニ、街の屋台までキャッシュレス決済に対応しているため、現金を持ち歩く必要はありません。
安心して決済ができる
海外では偽札や現金の盗難などの被害に十分注意する必要があります。
ですが、中国ではWeChatPayでの支払いに対応していることが多く、安心して決済ができます。
日本語に対応している
WeChatPayは中国のサービスですが、日本語に対応しているため登録や支払いの操作をするのにとまどう心配がありません。
もともとはメッセージングアプリWeChatに搭載された一機能のため、多くの方が使えるよう20言語以上に対応しているからです。
ちなみにAlipayは日本語に対応していません。
インバウンド対策ならWeChatPay対応は必須
日本の店舗のWeChatPay対応はかなり進んできているインバウンド対策として、日本のコンビニやショッピングモールではWeChatPayが対応できる店舗がかなり増えてきました。
観光庁によると、2018年の中国人によるインバウンド消費は1兆5,300億円を超えています。中国では2018年モバイル決済金額が約4,709兆円にものぼり、若年層だけでなく多くの年代で、現金で支払う習慣そのものが無くなっています。そのため、中国人をたくさん呼び込みたい店舗はWeChatPay対応が急務と言えるでしょう。
さらに2019年8月にはLINE PayがWeChatPayとの連携を発表。WeChatPayユーザーは、LINE Pay加盟店に掲示されているQRコードを読み込むことで支払いが可能になるため、日本でのWeChat決済がますます普及することが予想されます。
まとめ
今回は中国で完全に普及したモバイル決済の 「WeChatPay (微信支付/ウィーチャットペイ)をご紹介しました。海外旅行や、国内決済、企業においてはインバウンド向けに、SNSに紐づく個人間決済で利便性が高いです。
一方でtiktokの制限問題をはじめ、中国が開発したアプリの個人情報漏洩は否めません。利用者は必ずデメリットを把握した上でリテラシーを高めた利用が必要不可欠です。
現在は新型コロナウィルスの影響で早急に必要というわけではありませんが、過去の歴史を振り返ると必ず新しい生活様式によりデジタル技術は増えていくでしょう。
国内のモバイル決済はLINEPAY、楽天PAYなど便利な反面、種類が多すぎて煩雑といった声が聞かれます。また現金でのやりとりから脱却できない面も否めません。
より便利で快適な時間を過ごすために新たな技術を試してみてはいかがでしょうか?
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