【新型コロナとGoToTravel】訪日数99.9%減の衝撃!日本のインバウンドの現状を知る

新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、2020年4000万人を目標にしてきた訪日外国人旅行客数(インバウンド)が、一気に消滅しました。20年5月に至っては、前年の約277万人に対し、わずかに1700人。インバウンド拡大による成長に期待していた企業には辛く厳しい状況になっている。

現在も多くの国で外出禁止や海外渡航制限をしており、実質的な鎖国政策が続いています。日本のみならず、世界中で海外旅行需要は消滅したも同然の状況に陥っています。

7/22からのGo To Travelキャンペーンも何故強行スタートが必要だったのか?今回はコロナウィルスの影響により消滅したインバウンドの現状を知ることで、その理由に迫ります。

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5月の訪日客、たった1700人 : 消滅したインバウンド

日本政府観光局のまとめによると、5月の訪日外国人客は、前年同月比99.9%減の1700人だった。1964年の統計開始以来、初めて1万人を割り込んだ4月の2900人よりも、さらに減少し、過去最少となりました。

中国人客は2019年5月は75万6365人だったのに対して、20年5月はわずか30人で、ほぼ100%減。韓国20人。台湾、香港、タイ、シンガポールはそれぞれ10人未満で全滅状態。フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペインの欧州諸国も軒並み10人未満。国別で最も多かったのが米国で50人でした。

インバウンドとは?

インバウンドとは、主に日本の観光業会において「外国人の日本旅行(訪日旅行)」あるいは「訪日外国人観光客」などの意味で用いられます。インバウンドは、英語のinboundに由来しています。直訳すると「内側を行き来する」になります。

またアウトバウンドはインバウンドの対義語となる言葉で、「内から外に出る」意味の言葉として様々な業界で使用されています。 特に観光業界で使われるアウトバウンドは、海外旅行をする日本人、もしくは海外旅行そのものを指す言葉です。

これらの言葉が使われるようになったのはここ10年ほどですが、昔も日本に外国人観光客を誘致する動きはありました。

インバウンドの歴史

明治時代に、民間機関からスタート

遡ること120年以上前の1893年(明治26年)、日本で初めて外客誘致専門の民間機関「喜賓会」が誕生しました。当時の日本を代表する実業家、渋沢栄一が国際観光事業の必要性と有益性を唱え、訪日外国人をもてなす目的で設立したもので、海外の要人を多数迎え入れ、各種旅行案内書の発行などを行いました。

1912年(明治45年)には後に日本交通公社、JTBとなるジャパン・ツーリスト・ビューローが創設され、鉄道省の主導のもと、外国人への鉄道院の委託乗車券の販売、海外での嘱託案内所の設置など、訪日外国人観光客の誘致を行いました。このように明治中期の日本におけるインバウンド施策は、世界の名だたる観光立国と比べての遜色のないものだったのです。

戦後も外貨獲得のために外国人旅行者の誘致に重きを置き、1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催に向け、外国人旅行客を受け入れるインフラが整備されました。

海外渡航自由化で加速

ところが、先進的だった日本のインバウンドビジネスは、1970年(昭和45年)を境に成長が鈍化しました。その要因は大きく二つ。一つは、日本の観光業界が国内市場に重点を置いたこと。もう一つは、1964年に観光目的の海外渡航が自由化されたこと。高度成長期には海外へ出かける日本人(アウトバウンド)が増加。1964年に22万人だったアウトバウンドは1971年(昭和46年)には96万人に達しました。

インバウンドについては、大阪万博開催の1970年にピークの85万人となりましたが、翌年にはアウトバウンドが逆転しました。以降は円高の影響もあって、インバウンドよりもアウトバウンドの市場が大きくなり、1995年(平成7年)にはアウトバウンドが1530万人、インバウンドは335万人とアウトバウンドが5倍近くに増えました。

1996年(平成8年)には、訪日外国人旅行者数を2005年(平成17年)時点で700万人に倍増させることを目指した「ウェルカムプラン21」を運輸省が策定しました。また、2002年(平成14年)の日韓ワールドカップサッカー大会開催はインバウンドに追い風になりました。それでもアジアへのアウトバウンドが増加するなど、両者の開きは拡大する一方でした。

訪日外国人数と出国日本人数の推移 (1)

2015年、45年ぶりにインバウンドがアウトバウンドを上回る

そこで、2003年(平成15年)、政府はビジット・ジャパン・キャンペーンを立ち上げ、国を挙げて観光の振興に取り組み、観光立国を目指す方針を示しました。それから10年たった2013年(平成25年)、訪日外国人客数が目標であった年間1000万人を突破すると、新たに2020年までに2000万人、2030年までに3000万人にするという目標が掲げられました。

同年に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、円安も追い風となり、2015年(平成27年)には訪日外国人客数1973万7000人を記録。2000万人まであと一歩に迫ると同時に、大阪万博が開催された1970年以来45年ぶりに、入国者数が出国者数を上回りました。

2018年に3000万人を突破

訪日外国人客数が予想を上回るペースで増加していることから、政府は2016年(平成28年)春に、「2020年に4000万人、2030年に6000万人」と目標を上方修正。2016年に初めて2000万人を突破、2018年には3000万人を突破しました。

2019年はラグビー・ワールドカップの開催で欧米豪の訪日客は大きく伸びましたが、日韓関係の悪化の影響で韓国からの訪日客が激減したこともあり、前年からの伸びは2.2%増にとどまりました。2020年は東京2020大会の開催もあり伸びが期待されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大で3月までの訪日客数は減少しており、4000万人の目標達成は非常に厳しいと言わざるを得ないでしょう。

世界の観光マーケットと、輸出産業としての日本の観光市場

世界における日本の観光市場とは?

それでは、現在の世界の観光マーケットにおいて日本はどのくらいの位置にいるのか見てみましょう。

国連世界観光機関(UNWTO)が発表した2018年の国際ツーリズムの統計では、日本は海外旅行者数(国際観光客到着数)で世界11位、アジアでは中国、タイに次ぐ3位でした。世界10位のイギリスとの差は約500万人で、日本のトップ10入りもそう遠くはないかもしれません。また、国際観光収入ランキングでは、前年に初のトップ10入りを果たした日本が、7年連続で二桁の伸びを示し、さらに順位を一つ上げました。

観光産業は第三位

日本の観光産業は、今では、自動車産業、化学産業に続く、第3位の輸出産業になりました。そしてその観光産業はインバウンドが牽引していると言っても過言ではありません。UNWTOによれば、世界の輸出区分でも、観光は化学、エネルギーに次ぐ第3位に入っており、自動車関連を上回るとのことです。

訪日外国人旅行消費額の製品別輸出額との比較2016

インバウンドの重要性

「インバウンド消費額」とも呼ばれる訪日外国人旅行消費額は、2015年に飛躍的な伸びを示して初めて3兆円を突破すると、2017年には4兆円を超えました。その後伸びは緩やかになり、2019年は前年比6.5%増の4兆8113億円でした。

また、2019年の訪日外国人旅行者の1人当たりの旅行支出は、15万8458円となっています。前年と比べると3.5%増となり、これまでの3年連続減少にはストップがかかりました。前述のようにラグビー・ワールドカップ開催で欧米豪からの訪日客が増えましたが、彼らの旅行支出は通常のインバウンド客の2.4倍もあり、平均支出は38.5万との調査結果も出ています。なお、訪日外国人旅行者の1人当たりの旅行支出は日本人による国内旅行の旅行支出(3万7854円)の4.18倍に上ります。

訪日外国人の国・地域別ランキング

2019年の訪日外国人客数は、前年比2.2%増の3188万2000人でした。国・地域別に見ると、1位の中国が全市場で初めて900万人台を達成、韓国は激減するも558万人で2位を維持、これに台湾、香港を加えた東アジア4市場で訪日外国人客全体の70.1パーセントを占めています。また、前年に東南アジア市場で初めて100万人を突破した6位のタイは2019年も好調でした。

まとめ

今回はコロナウィルスの影響により消滅したインバウンドの現状を知ることで、その影響がいかに大きなものであるか、そして観光業会への緊急の経済施策の必要性も考えさせられました。今後、新型コロナウイルスの影響はどうなっていくのでしょうか?

観光庁長官は、定例会見で「20年のインバウンドは対前年比6割から8割減」とのコメントを残しました。7月には新規感染者数の安定を見て、県境を越えた移動自粛が解かれ、飲食店の営業も通常に戻った。しかし、それから2週間後には、首都圏を中心に感染者が再び増加し、GOTOキャンペーンも強行されました。

この変化が、今後の観光業会にどう影響を及ぼすのか、今からその答えを探すのは難しいですが、より俯瞰的にデータと正しい情報を得ることで新たな生活様式に柔軟に対応していきたいですね^^

出典元:日本政府観光局/nippon.com/やまとごころ.jp

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